泣ける曲
僕の好きなロックバンドの一つにイギリスのQUEEN(クイーン)がいます。
「QUEENのアルバムで最高傑作はどれか?」と聞かれたら、多分大方のファンは、“Sheer Heart Attack”や“A Night at the Opera(オペラ座の夜)”等70年代のアルバムを真っ先に挙げるに違いありません。もちろん、これらのアルバムは大傑作であることは疑う余地もありません。僕も大好きです。
でも、僕の中でのQUEENの最高傑作は1991年発表の“INNUENDO”です。これは、故フレディ・マーキュリーの最後のアルバムで、QUEENの事実上最後のアルバムにあたります。リアルタイムで聴いていた(発売日に購入)ということと、このアルバムリリースの約10ヶ月後にフレディがこの世を去ったということも大きいかもしれませんが、粒ぞろいの名曲が集まった名盤です。
ご存知のようにフレディはエイズによって亡くなりました。80年代末期から「エイズに侵されており、病状は深刻だ」という噂は流れており、死亡のニュースが世界を駆け巡った時、「ああ、やっぱり…」と思ったファンは多いと思います。
“INNUENDO”を聴いた時、「あ。これは良い。きっと名盤になる」と直感的に思いました。なにしろ70年代に回帰したかのような楽曲群は素晴らしく、演奏も良いし、フレディのヴォーカルも表現が実に多彩で、この年に聴いたアルバムでは最高のものでした。(チャート最高位:全英1位、全米30位)
そして10ヵ月後、このアルバムに収められている楽曲群は、まるで死期を悟ったものが書いた“遺書”であったことに気付くのです。
“I'm Going Slightly Mad”や“I Can't Live With You”でまもなく訪れる死との葛藤を鬼気迫るテンションで歌い、“These Are the Days of Our Lives”でメンバーとの思い出を切々と語り、“Delilah”では愛猫を歌い、そしてアルバムラストで“The Show Must Go on”と力強く歌い上げるのです。
このアルバムのフレディのヴォーカルの表情の豊かさを聴くと、「これが本当に末期患者の歌声だろうか?!」と驚きます。
この頃、フレディはすでに自分の死期を悟っており、メンバーも時間が残されていないことを知っていたそうです。だからフレディの体調を見つつ、レコーディングを進めていたそうです。
僕がQUEENの全楽曲の中で一番好きな曲が、このアルバムに収録されている“These Are the Days of Our Lives(輝ける日々)”です。
この曲はシングルカットされ、PVも制作されましたが、当時そのPVを見て愕然としたものでした。
PVに映るフレディは明らかに痩せこけており、体調が万全ではないことは一目瞭然でした。後で知ったんですが、顔色が判らないようにPVはモノクロで制作し、化粧をして撮影したそうです。
今、久々にこのPVを見てもやはり「良い曲だなぁ…」と思います。
メンバー4人がこれまでの足跡を懐かしむように、仲間との別れを惜しむように演奏する姿、表情を見ていると泣けてきます。ブライアン・メイのギターはまるですすり泣くような音を奏でており、彼の名演の一つだと思います。最後にフレディが満足げに微笑み、“I still love you...”とつぶやくシーンが印象的です。この“I still love you...”は、メンバー、そしてファンに向けられた彼の最後のメッセージなのです。
“These Are the Days of Our Lives”/ QUEEN
先程、「QUEENの事実上最後のアルバム」と書きましたが、実はQUEEN名義のアルバムは、この後にもう一枚だけあります。1995年発表の“Made in Heaven”です。
このアルバムは、未完に終わってしまった楽曲を残されたメンバーが仕上げ、残りをメンバーのソロ曲で埋め合わせたアルバムで、ヒットはしましたが完成度はかなり低いです。
日本では、このアルバムから“I Was Born To Love You”が木村拓哉主演のTVドラマ「プライド」に使用されたりしてヒットはしましたが、元々この曲はフレディがソロ名義で発表していた曲であり、アルバムに収録されているものは演奏をQUEENメンバーのものに差し替えたものです。
この曲でQUEENを知った人は多いと思いますが、70年代の名盤含め、ぜひアルバム“INNUENDO”を聴いてほしいです。
| 固定リンク
「音楽」カテゴリの記事
- 私を構成する16枚のプログレアルバム(2020.08.02)
- ジョン・ウェットンの思い出(2019.08.31)
- ジョン・アンダーソンのピースフルな世界(2018.08.17)
- R.I.P. Keith Emerson(2016.03.17)
- 私を構成する9枚(2016.01.30)
「ロック」カテゴリの記事
- 私を構成する16枚のプログレアルバム(2020.08.02)
- ジョン・ウェットンの思い出(2019.08.31)
- ジョン・アンダーソンのピースフルな世界(2018.08.17)
- R.I.P. Keith Emerson(2016.03.17)
- 私を構成する9枚(2016.01.30)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
久しぶりに聴きました。文字通り「痩せても枯れても」フレディはフレディですね。ポール・ロジャーズも好きではありますがクイーンのボーカルとなると話は別です。唯一無二の存在だったことを改めて感じました。
投稿: ゆうけい | 2007.10.23 08:55
▼ゆうけいさん
こんばんわ。
レコードコレクターズの最新号がクイーン特集なんですよね。
久々にCDを引っ張り出してきて聴き入ってしまいました。(この号での“INNUENDO”の評価はめっちゃ低いんですけど(^^;)
ジョン・ディーコンが辞めちゃって、ブライアン・メイも歌えるし、ロジャー・テイラーも歌えるんだけど…やっぱりあの声が無いと別のバンドですね。
ホントに唯一無二のヴォーカリストでした。
投稿: ライナス | 2007.10.24 22:29